2026/08/31 11:13

草餅、お灸、よもぎ湯、よもぎ茶。
よもぎは、日本人にとって昔からとても身近な植物です。
単に「昔から体にいいと言われてきた草」というだけではありません。
現在では、よもぎや近縁種について世界各地で研究が行われ、抗酸化、抗炎症、抗菌・抗真菌、抗ウイルス、鎮痛、免疫調節、止血、鎮静など、さまざまな生理活性が報告されています。
さらに、糖・脂質代謝、肝機能、がん細胞などを対象とした研究も行われています。
では、よもぎにはどのような可能性が研究されているのでしょうか。

まず、よもぎは日本でも正式な「生薬」です
日本では、よもぎは古くから民間で使われてきただけではありません。
厚生労働省の第十九改正日本薬局方には、「ガイヨウ(艾葉)」として収載されています。
そこでは、ヨモギ(Artemisia princeps Pampanini)またはオオヨモギ(Artemisia montana Pampanini)の葉および枝先が「艾葉」とされています。
つまり、日本のよもぎには「食べられる野草」という顔とともに、古くから利用されてきた生薬としての顔があります。

❶ 抗酸化作用
よもぎ研究で報告されている代表的な働きの一つが、抗酸化作用です。
私たちの身体では、代謝などによって活性酸素が生じます。活性酸素が過剰になると酸化ストレスにつながるため、抗酸化物質について多くの研究が行われています。
日本のヨモギ Artemisia princeps の抽出物を用いた細胞研究では、活性酸素種(ROS)の生成低下や、SOD・カタラーゼといった抗酸化酵素に関連する作用が報告されています。
また、ヨモギ、オオヨモギ、Artemisia argyi の精油を比較したレビューでも抗酸化活性が報告されています。

❷ 抗炎症作用
炎症に関係する働きも、よもぎ類で盛んに研究されている分野です。
2024年の Artemisia argyi に関する包括的レビューでは、主要な薬理研究分野の一つとして抗炎症作用が挙げられています。
さらに精油についても、炎症に関係するNF-κBなどのシグナル経路や、IL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症性因子との関係が研究されています。
よもぎが昔から身体のケアに利用されてきた背景を、現代科学から探ろうとする研究の一つです。

❸ 抗菌・抗真菌作用
「よもぎには殺菌作用がある」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
科学的な表現としては、抗菌・抗真菌作用が研究されていると言う方が正確です。
ヨモギ類の精油に関するレビューでは、抗微生物活性が報告されています。
Artemisia argyi についてはさらに研究が進んでおり、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの細菌、カンジダなどの真菌に対する作用を扱った研究がまとめられています。
精油に含まれるテルペノイドなどと、微生物の細胞膜やバイオフィルムとの関係についても研究されています。

❹ 抗ウイルス作用
細菌だけでなく、ウイルスに対する作用についても研究されています。
Artemisia argyi を対象にした2026年のレビューでは、細菌・真菌に加え、複数のウイルスを対象とした研究がまとめられています。
また、艾葉の成分・薬理作用をまとめたレビューでも、抗菌作用とともに抗ウイルス作用が挙げられています。
ただし、これは「よもぎを使えばウイルス感染を防げる」という意味ではありません。

❺ 身体を温める――伝統医学で大切にされてきたよもぎ
ここは、よもぎを語るうえで外せません。
東アジアでは、艾葉は身体を温める性質を持つ生薬として長く利用されてきました。
2021年の Artemisia argyi の精油についてまとめたレビューでも、東洋で2000年以上にわたり、医薬、食品、入浴、灸、燻蒸などに利用されてきた歴史とともに、伝統的に「温」の性質を持つ植物として扱われてきたことが紹介されています。
日本でも、その代表的な文化がお灸です。
乾燥させたよもぎの葉から「艾(もぐさ)」を作り、お灸に使用してきました。
そして、よもぎ湯としてお風呂に使う文化も受け継がれています。
つまり、「温める」という考え方は突然現代に生まれたものではなく、よもぎの長い伝統利用の中心にある考え方の一つです。

❻ 女性の養生とよもぎ
よもぎは、特に女性の養生と深い関係を持ってきた植物でもあります。
伝統医学における艾葉は、婦人科領域で重要な生薬として使われてきた歴史があります。2021年のレビューでも、伝統的に婦人科疾患に用いられてきたことが紹介されています。
日本でも艾葉を含む漢方処方として知られているものの一つが「芎帰膠艾湯」です。
ここで大切なのは、「女性にいい」という一言だけで終わらせるのではなく、女性の身体を支えるために艾葉が長い歴史の中で利用されてきたという背景です。
現代になって突然作られたイメージではありません。

❼ 止血に関する働き
艾葉の伝統的な用途として、もう一つ重要なのが止血です。
Artemisia argyi は伝統医学において重要な止血生薬として利用されてきたことが、薬理・伝統利用をまとめたレビューでも紹介されています。
一方、精油については「抗凝固」に関する生物活性をまとめた研究もあります。
一見すると反対に見えますが、使用する部位・抽出物・成分・実験条件が違えば作用も異なる可能性があります。
そのため「よもぎ=血を止める」と単純化するのではなく、伝統医学における止血用途と、現代の各種抽出物の研究は分けて理解する必要があります。

❽ 鎮痛作用
よもぎ類では痛みに関係する作用についても研究されています。
艾葉の化学成分と薬理作用をまとめたレビューでは、鎮痛作用が報告されている薬理活性の一つとして挙げられています。
また Artemisia argyi 精油の研究をまとめたレビューでも、抗炎症作用とともに鎮痛作用について報告されています。
ただし、この分野も「よもぎを使えば痛みが治る」という臨床的な意味とは区別する必要があります。

❾ 鎮静作用
よもぎの香りにも興味深い研究があります。
ヨモギ Artemisia princeps、オオヨモギ Artemisia montana、Artemisia argyi の精油研究をまとめたレビューでは、抗菌、抗炎症、抗酸化などと並んで鎮静に関連する生物活性も報告されています。
よもぎは食べるだけではなく、お灸、入浴、燻蒸など、「香り」とともに利用されてきた植物でもあります。
よもぎファームが香りのシリーズ「草灯り」を作っている理由も、こうしたよもぎの多面的な魅力にあります。

❿ 免疫調節に関する研究
免疫機能との関係についても研究されています。
近年の Artemisia argyi 精油のレビューでは、免疫調節に関連する作用が研究対象となっています。
炎症反応と免疫機能は密接に関係しているため、よもぎに含まれる成分が免疫系のさまざまなシグナルにどう作用するのか研究が続けられています。
ここも、「免疫力が上がる」と単純に言い換えるのではなく、免疫調節に関する研究があると理解するのが適切です。

⓫ 肝臓を保護する働きに関する研究
艾葉の薬理作用を整理した文献では、肝保護作用も研究分野の一つとして挙げられています。
ただし、この領域は前臨床研究を含むため、「肝臓病に効く」という意味ではありません。
よもぎに含まれるさまざまな成分と、酸化ストレスや炎症、代謝との関係を調べる研究の一環です。

⓬ 血糖・脂質・肥満など、代謝に関する研究
これは日本のヨモギ Artemisia princeps そのものでも研究されています。
高脂肪食を与えたマウスに Artemisia princeps のエタノール抽出物を与えた研究では、体重、脂肪組織、血糖、インスリン、耐糖能などに関する変化が報告されています。
別の動物研究でも、Artemisia princeps の抽出物と血中・肝臓の脂質代謝との関係が研究されています。
さらに、ヨモギの葉から得られたカフェオイルキナ酸誘導体について、糖尿病や肥満研究で標的とされる酵素PTP1Bに対する阻害活性も報告されています。
ただし、これらは主として動物・試験管レベルの研究です。
「よもぎ茶を飲めば痩せる」「血糖値が下がる」ということを証明したものではありません。

⓭ がん細胞を対象とした研究
ここまで研究されています。
日本のヨモギ Artemisia princeps の抽出物を用いた研究では、ヒト肝がん由来の培養細胞に対して、細胞増殖やアポトーシスとの関係が調べられています。
また Artemisia argyi のレビューでも、抗腫瘍作用は主要な研究分野の一つとして整理されています。
ただし、これは特に誤解してはいけません。
培養されたがん細胞に対する作用が確認されたことと、人がよもぎを摂取してがんを予防・治療できることは全く別です。
したがって、「よもぎには抗がん効果がある」と一般消費者向けに単純化するのは適切ではありません。

⓮ 「デトックス」については、どう考える?
よもぎについて調べると、よく出てくる言葉が「デトックス」です。
ただし、ここは他の作用と少し分けて考える必要があります。
「デトックス」は非常に広い言葉で、医学・薬理学上の一つの明確な作用を指す言葉ではありません。
今回確認した主要なよもぎ・艾葉の研究レビューでは、
・抗酸化
・抗炎症
・抗菌
・抗ウイルス
・抗真菌
・免疫調節
・鎮痛
・肝保護
・代謝関連
などは具体的な研究対象として挙げられていますが、これらをまとめて「よもぎには科学的にデトックス効果が証明されている」とする根拠にはなりません。
よもぎ湯で身体を温め、汗をかき、気分をすっきりさせることを日常語として「デトックスした感じ」と表現することと、医学的な解毒作用を主張することは別です。
ここは、よもぎの魅力を弱めるためではなく、本当に研究されている魅力をきちんと伝えるために区別したいところです。

では、よもぎには「何がいい」のか?
ここまでをまとめると、よもぎや艾葉、近縁種について現代の研究で報告されているものには、
抗酸化、抗炎症、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、鎮痛、鎮静、免疫調節、肝保護、代謝調節などがあります。
さらに伝統医学では、身体を温める、寒を散らす、止血、女性の養生などを目的として長い歴史の中で利用されてきました。
そして日本では、現在もヨモギとオオヨモギの葉・枝先が「艾葉(ガイヨウ)」として日本薬局方に収載されている植物です。
だからこそ私たちは、よもぎを単なる昔の野草ではなく、古くからの知恵と現代の研究、その両方から改めて見つめる価値のある植物だと考えています。

大切なお知らせ
この記事で紹介している内容は、ヨモギ、オオヨモギ、Artemisia argyiなどに関する学術研究や、艾葉の伝統的な利用について紹介したものです。
研究には、細胞試験、動物試験、精油・抽出物を用いた試験などが含まれており、すべての作用が人を対象とした臨床試験で確立されているわけではありません。
また、これらは「よもぎファーム」の各商品に疾病の予防・治療その他の効果効能があることを示すものではありません。
商品の特性や使用方法については、各商品ページをご確認ください。

主な参考文献・資料
1. 第十九改正日本薬局方「ガイヨウ(Artemisia Leaf / ARTEMISIAE FOLIUM)」/厚生労働省
日本のヨモギ Artemisia princeps とオオヨモギ Artemisia montana が艾葉として収載されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001689419.pdf?utm_source=chatgpt.com
2. A review of the research progress on Artemisia argyi Folium: botany, phytochemistry, pharmacological activities, and clinical application
植物学・成分・薬理・臨床応用を総合的に整理した2024年のレビュー。抗炎症、抗腫瘍、抗酸化、抗菌などをまとめています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38775853/
3. Pharmacological and bioactive properties of Artemisia argyi H. Lév. & Vaniot essential oil: a review
精油の抗酸化、抗炎症、抗微生物、免疫調節などをまとめたレビュー。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41573729/
4. From longevity grass to contemporary soft gold: Explore the chemical constituents, pharmacology, and toxicology of Artemisia argyi H.Lév. & Vaniot essential oil
2000年以上にわたる伝統利用、温性、婦人科・止血用途、精油の薬理作用などをまとめたレビュー。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34246739/
5. Review of the Chemical Composition and Biological Activities of Essential Oils from Artemisia Argyi, Artemisia Princeps, and Artemisia Montana
今回かなり重要な文献です。日本のヨモギ Artemisia princeps とオオヨモギ Artemisia montana を含めて精油の研究を比較し、抗微生物、抗炎症、抗酸化、抗腫瘍、抗凝固、鎮静などを整理しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37638613/
6. Research progress on chemical constituents from Artemisiae Argyi Folium and their pharmacological activities and quality control
艾葉について、抗菌、抗ウイルス、止血、抗腫瘍、肝保護、鎮痛、抗炎症、抗酸化などの研究をまとめています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33164385/
7. Anti-pathogenic effects of Artemisia argyi and its applications: the past, present, and future
細菌・真菌・ウイルスなど病原微生物に関する研究をまとめた2026年のレビュー。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42285686/
8. Antioxidant and anticancer activity of Artemisia princeps var. orientalis extract in HepG2 and Hep3B hepatocellular carcinoma cells
日本のヨモギと近縁の Artemisia princeps を対象に、抗酸化作用と肝がん由来細胞について調べた研究。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3828435/?utm_source=chatgpt.com
9. Anti-obesity and anti-diabetic effects of ethanol extract of Artemisia princeps in C57BL/6 mice fed a high-fat diet
Artemisia princeps と体重、脂肪組織、血糖・インスリンなどとの関係を調べた動物研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21773585/
10. Antilipogenic and hypolipidemic effects of ethanol extracts from two variants of Artemisia princeps Pampanini in obese diabetic mice
Artemisia princeps と脂質代謝についての動物研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20041776/
11. Identification of caffeoylquinic acid derivatives as natural protein tyrosine phosphatase 1B inhibitors from Artemisia princeps
ヨモギ葉由来のカフェオイルキナ酸誘導体とPTP1B阻害活性についての研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29525218/
