2025/07/26 15:56

春、まだ冷えの残る風のなかにふと漂う、懐かしい草の香り。
土手や畑の隅、山のふもとで、ふわりと銀緑色の葉を揺らす植物──それが「よもぎ」です。
日本では古くから、よもぎは薬草として、また季節の行事や食文化の中でも広く親しまれてきました。
「草餅」や「もぐさ」といえば、多くの人がその名を知っているでしょう。
しかし、わたしたちが感じているよもぎの魅力は、それだけにとどまりません。
よもぎとは、どんな植物?
よもぎはキク科の多年草。
中国では「艾葉(がいよう)」と呼ばれ、漢方薬としても重用されています。
『神農本草経』をはじめとする古代中国の文献や、日本の『万葉集』『延喜式』などにもその効能が記されており、人々は古来より、草のちからに命と願いを託してきました。
“ハーブの女王”と呼ばれる理由
「ハーブの女王」とも称される理由は、その全方位的なはたらきにあります。
血行促進、冷えの改善、皮膚の保護、殺菌、虫よけ、そして心身のリラックスまで。
葉裏の白い綿毛は、まるで繊細な布のように草を守り、触れた人をやわらかく包みこんでくれるようです。
魔除け・浄化・霊的なよもぎの力
よもぎは、「魔を祓う草」としての歴史も持っています。
端午の節句によもぎと菖蒲を束ねて軒先に吊るしたり、夏越の祓やお盆では、精霊や御霊を迎え、送り出す場面に登場したり。
その香りは「目に見えぬもの」に働きかけ、空間や心身を清めると信じられてきました。
病を“気の乱れ”や“穢れ”と見ていた時代、人々はよもぎを焚いて空間を整え、草の力で身を守ったのです。
それは呪術ではなく、自然と共にある生活のなかの「祈り」でした。
よもぎファームで大切にしていること
わたしたち、よもぎファームでは、草の力をできるだけそのまま届けることを目指しています。
農薬を使わず、自然のリズムを見つめ、一本一本を手で摘み、香りとちからを閉じ込める。
収穫から加工まで、すべて人の手で、丁寧に行っています。
その作業の中に、私たちはいつも「慈しみ」の精神を見出します。
仏教で言えば「大悲(だいひ)」──
他者の苦しみに寄り添う、静かで深い思いやり。
よもぎは、主張せず、咲き誇らず、ただ静かにそばにいてくれる。
まるで菩薩のような在り方です。
よもぎは「効能」ではなく「時間」をくれる草
わたしたちがよもぎを通して伝えたいのは、単なる「効能」ではなく、“自分を大切にする時間”を取り戻すことです。
日々の忙しさの中で忘れかけた、草の香りや手触り、そして感情の奥にある「ほっとする感覚」を、もう一度感じてほしい。
その時間こそが、小さな修行であり、草を通じた癒しの祈りなのかもしれません。
郡上の山あいで、在来のよもぎを無農薬で育てています。
草の力が、そっと寄り添うような製品を、これからも丁寧に作っていきます。
このブログが、どこかの誰かにとって、草と自分をつなぎ直すようなやさしい時間になれたら嬉しいです。
よろしければ、他の記事も読んでみてください。草の時間を一緒に歩んでいただけたら幸いです。


 
  
							