yomogifarm

2025/07/03 12:33

<よもぎファームから見る夕暮れ>


僕は田舎が嫌いだった


正直に言うと、若いころの僕は、
実家のある田舎があまり好きじゃありませんでした。

「古今伝授の里」と呼ばれる
── 岐阜の郡上、大和町の山奥。

本屋やゲーセンなど、
若者が好きな遊び場は一切ない。
不便なだけの場所だと思って、
大学を機に都会に出ました。

<幼少期の僕|大学時代の僕>


夜中まで遊び、お酒を飲んで、
朝ラーメンを食べて寝るような生活を
楽しんでいた僕にとって、

「もうここに戻ってくることはない」

と思っていたほどです。



オーガニックコスメとの出会い


大学卒業後は、普通に会社員として働いていました。
そして、29歳で独立し、個人事業主に。
6年後、35歳で株式会社SKY DEERを設立しました。

国産オーガニックコスメ「ネオナチュラル」の
海外販売(中国・香港の総代理店)
としての仕事に取り組みながら、
成分や製造過程を一つひとつ学び、
書類の翻訳作業を通じて、
自然やオーガニックに関する情報に日々触れていました。

防腐剤や香料、農薬のこと、
肌や身体への影響など──
たくさんの資料を読み込む中で、
「自然の力」への理解を少しずつ深めていった時期です。

けれどその頃はまだ、
「自然」との距離が、
自分の中ではどこか遠かったのかもしれません。



すべてを変えた、義父の死


40歳のとき、妻の父ががんで亡くなりました。

がたいが良くて、優しく、
大黒柱のように頼もしかった人です。

会社を経営していて、
精神力がとにかく強く、
がんになってからも、
常に前向きで、楽観的でした。

がんが脳に転移したあとも、
仕事の図形を描きつづけ、
最後の最後まで、決して諦めませんでした。
弱音を吐いたことは、一度もありませんでした。

29歳から自営業をしていた僕は、
未熟で、失敗と挫折ばかりでした。
そんな僕を、ずっと信じて、励ましてくれました。
さまざまな面において、支えてくれました。

それなのに、ある日を境に、
すっとこの世からいなくなってしまった。

なぜ病気になったのか。
どこに問題があったのか。
あんなに元気だったのに──。
気づけば、ずっとそんなことばかり考えていました。


<よもぎファームから見る夏の山霧>

実家の空気の中で


その出来事をきっかけに、
自分の中の価値観が大きく変わった気がします。

・夜食をやめるようになった
・健康診断を定期的に受けるようになった
・フライパンをテフロンから鋳物に変えた
・キャンドルを灯し、ヨガをするようになった──

暮らし方そのものを見つめ直すようになりました。

今まで気にも留めていなかった実家の空気。
父が無農薬で育てた夏野菜。
井戸水で沸かしたお風呂のやわらかさと、
そのお湯の中でふわっと香る、ハーブの匂い ──

それらが、どれだけ貴重だったのかに、
やっと気づけたように思います。


<よもぎを手摘みしながら、畑をきれいにする僕>

よもぎと生きる暮らしへ


2021年、
独立して13年目、42歳になった僕は、
思い切って実家の地に会社の拠点を移し、
先祖代々暮らしてきた場所に戻ってきました。

郡上の自然に囲まれたこの土地で、
もう一度、ちゃんと自然と向き合って
生きていこうと決めました。

そして、ふるさと再生と里山文化の継承に、
強い使命を感じるようになりました。

選んだ草は「よもぎ」。

「ハーブの女王」とも呼ばれるほど、
よもぎは日本人の暮らしに深く根付いてきた植物です。




お灸・薬草・入浴・料理・染め物など、
古くからあらゆる場面で
人々を癒し、守り、支えてきました。

日用品・食品・化粧品 ──
幅広い分野で活躍できる植物です。

健康、美容、浄化、癒し、再生といった力を持ち、
暮らしの質を高め、
人の生き方そのものを整える力があると、
僕は信じています。




健康がなければ、
人生のすべては揺らいでしまう。

だからこそ、
「誰もが健やかに、自分らしく生きてほしい」
という願いを込めて―― よもぎを選びました。

よもぎは、この郡上の風土にもよく合い、
野山には在来種が自生しています。

農薬や化学肥料を使わず、土地と調和しながら、
「草本来の力」を引き出す栽培を心がけています。

香りも、色も、手ざわりも。
自然のままのものを大切に、
草の命を活かしたものづくりを、日々重ねています。



草の力が、寄り添う力になる


今の時代は、便利さや速さ、
そして強い刺激に囲まれた暮らしが当たり前です。

でも、よもぎの香りや味は、
そのどれとも違います。

強くはないけれど、
確かにそこにあって、
静かに寄り添ってくれる。
「草の力」って、そういうものだと思うんです。

僕たちが育てた草が、
誰かの暮らしの中で、そっと役に立てたら嬉しい。

そして今、地域とともに歩みながら、
自然の価値を伝え、
このふるさとの未来にも、
小さな力を重ねていきたい。

そう思って、今日も畑に立っています。




|よもぎファーム代表:野田 和宏



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